2024年3月22日、第3回Monthly XRP Ledger〜AMM特別編〜が開催されました。
前回のMonthly XRPLはこちら。
2024年3月9日
XRP Ledgerの2024年2月を振り返ろう!
今回のMonthly XRPL変更点
前回まではDiscordサーバでのみ開催していましたが、今回は実験的にTwitterスペース(音声)とDiscordサーバ(スライド共有、コメント交流)での同時開催となりました。
またAMMの話題ということで、AMMプロジェクトに携わっている私もスピーカーとして参加しました。
📢 スペース開催のお知らせ
— XRPL Japan (@XRPLJapan) March 19, 2024
23日早朝に有効化が予定されているAMMの基礎をQ&A形式でお届けします。
質問投稿をお忘れなく!
今回は試験的にふたつのプラットフォームを利用します。
🗣️ 音声:Twitter
📝 スライド共有&コメント交流:Discordhttps://t.co/164AofGac5
イベント主催
EVMおよびXRPLに生息する翻訳キノコ。
ブラウザウォレットCrossmarkのMod、Orchestra FinanceのPR、@XRPLJapanのツイートなどをしている。
XRPL AMMこれまでの経緯
日時 | 内容 |
---|---|
2022年07月 | AMM機能の提案が公開 |
2022年11月 | AMM機能の実装(コード)が公開 |
2023年07月 | AMM機能がレビュー承認完了 |
2023年09月 | rippled 1.12.0でAMM機能へのバリデータ投票開始 |
2024年03月 | バリデータの大多数の賛成票を獲得 & 有効化 |
[3月22日以降の追記]
日時 | 内容 |
---|---|
2024年03月24日 | AMMにバグが見つかり、各AMMプロジェクトが流動性提供ページを一旦閉鎖 |
2024年03月28日 | AMMバグを修正するHotfixアメンドメントがリリース |
2024年04月11日 | Hotfixがマージされる |
🪙 AMM基礎編
そもそもAMMって何?
AMMとは、Automated Market Makerの略で、日本語では自動マーケットメイカーです。
オーダーブックのように個別の売り注文・買い注文を作成するのではなく、プールにある資産の流動性を用いて取引を完結します。 流動性は誰でも提供でき、各プールが徴収した手数料は流動性シェアに応じて流動性提供者に分配されます。 この仕組みはプログラムによって成り立っており、自動で動いていることが自動マーケットメイカーと呼ばれる理由です。
うんちく
長らくオーダーブック型が主流であったXRPL界隈では、オーダーブック形式のDEXをDEX、AMM形式のDEXをAMMと呼ぶ傾向にありますが、AMMもDEXです。
LPトークンとは?
LPトークンとは、Liquidity Provider Tokenの略で、日本語では流動性提供トークンです。
ユーザがAMMプールに流動性を提供した際に、AMMプールが発行し、ユーザが受け取ります。 このLPトークンは将来ユーザがAMMプールから流動性を取り出す場合にAMMプールに返さないといけません。流動性の引換券として大事なものなので、しっかり保管してください。
LPトークンってどんな感じで表示されるの?
「LPトークン」表示の場合と、ペア情報表示の場合があります。
だそく
LPトークンのcurrency code
は、流動性を成すふたつのトークンそれぞれのcurrency code
を使ったハッシュ計算で決まるよ。
インパーマネントロス(IL)って?
簡潔に言うと「ウォレットに両トークンをガチホしておくのではなく、AMMに流動性としてトークンを提供したことにより被る損失」です。
ユーザはトークンAとトークンBを50:50でAMMプールに流動性として提供します。AMMは利用状況に応じ、自動的にプールをリバランスします。つまり、トークンAとトークンBは半々の割合ではなくなります。このことから、トークン価格によっては流動性提供前より資産価値が低くなってしまう(=インパーマネントロス)の可能性があるのです。
ただし、インパーマネントロスは流動性を取り出すまで確定しません。
インパーマネントロスについては長くなるので、別途記事にしたいと思います。
「”ロス”という名前の通りリスクだけど、防ぐ手段はあるし、流動性を取り出すまでロスは確定しない」ことは知っておいてください。
XRPはガチホしておいたほうがいいの?
ありきたりですが、
結論:戦略による
です。
-
XRPガチホの利点
- マーケットが〜とか考えなくて良い。信じてHODL。
- XRPが好調なときに100%恩恵を受けられる。
- 税金計算がシンプル(税理士と相談してくださいね)。
-
XRPガチホの不利な点
- XRPが不調な時はダイレクトに資産が減る。
- ダイアモンドハンドでない人は精神的に辛い。
- 基本的にガチホによる収入はない(※エアドロ除く)。
AMMでは、ユーザはふたつのトークンをAMMプールに流動性として預け、そのペアを利用した取引があった場合に手数料を受け取ります。
この手数料収益があることが、ガチホに比べた最大のアドバンテージです。(先に述べた通りリスクもあります)
うんちく
EVMチェーンでは、さらにこのLPトークンを運用してAMMプロジェクトのトークンを得る「イールド・ファーミング」が活発ですが、現状スマコンのないXRPLプロトコルでは全く同様のことはできません。各自工夫しながら中央集権的に報酬をエアドロしてイールドファーミングぽく利回りを分配する必要があります。
どれだけ稼げる?
AMMでどれだけ手数料収益をあげられるかは
- 参加したAMMプールペアの取引高
- AMMプールの手数料
- AMMプールに対するユーザのシェア
の3点に依存します。
取引高がなければ一切収益はありませんし、もし取引高が1000万ドル分あっても、手数料が0%なら一切収益になりません。
逆に取引高が1万ドルでも、手数料が1%で自分が100%のシェアを占めているなら、10000*0.01=1000ドルの収益になります。
流動性は入れておくだけでいいの?
いいえ。
手数料収益に関連する上記3要素から「どのペアに取引需要があり、どの程度収益を上げているか」を知ることが大切です。暗号通貨のトレンドの移り変わりは早いので、数ヶ月放置したらトークン価格や取引高がゼロになっていた、ということもあり得ます。
AMMへの流動性提供とステーキングとは違います。
流動性提供はみずものだと考えてください。
AMMでの資産運用によるパッシブインカムを得られるのは、提供した流動性をきちんと管理している人に限ります。
流動性を提供したら、
- ペアの取引高状況
- ペアであるふたつのトークンそれぞれの価格遷移
- ペアであるふたつのトークンそれぞれの価格に影響しそうなニュースのチェック
はこまめに追うようにしてください。
**よく分からない場合は、まずDevnet版を使ってみてください。
Devnetでは本物の通貨ではなく、開発用の仮トークンを使ってAMM機能を試すことができます。
Orchestra FinanceのDevnet
なんとなくわかったなら、失っても良い程度の超少額でMainnetを試すのもありです。
流動性はロックされるの?
いいえ。
ユーザは、ふたつ(シングルアセット入金ならひとつ)のトークンをAMMプールに流動性提供し、LPトークンを受け取ります。 このLPトークンにはロックがないので、流動性を取り出すことで預けたふたつ(シングルアセット入金ならひとつ)のトークンを取り戻すことができます。この時LPトークンはAMMプールに返却(バーン)されます。
流動性を提供した5秒後にやっぱりやめた!ができます。
※トランザクションコストはかかります
🪙 AMM実践編
Orchestra Financeのチュートリアルはある?
Orchestraの公式ビデオチュートリアルはまだありません。
コミュニティメンバ有志による英語のYoutubeビデオはあります。ドキュメントは現在Devnet版となっていますが、近いうちに更新される予定です。
たこのりさんがブログでOrchestra Financeの使い方を紹介してくださいました!
ドキュメントの日本語化予定はある?
日本のユーザベースが大きいとアピールできれば日本語化されると思います。 ちょっと技術的になりますが、Qさんが訳してくださっているxrpl.orgのAMMドキュメントもとても参考になります。
つぶやき
AMMに関して、一部のインフルエンサーやプロジェクトが誤った情報をガンガン流しています。信頼できるソースから情報を得ること、念のため複数のソースから情報を得てクロスチェックするよう心がけてください。
XRPを持っている人が多いけど、シングルアセット入金・出金が使えるの?収益に違いはある?
- シングルアセット入金・出金機能はXRPLプロトコルで実装されている。
- 使えるようにユーザーインタフェースを設けるかどうかは各AMMプロジェクト次第。
- 入金額に対しAMMプールの流動性が小さい場合においては、プライスインパクトが大きくなるため、通常のふたつのトークンを用いた流動性提供時よりもらえるLPトークンが少なくなる。(その分プールでのシェアが減り、手数料収入が微減する)
- したがって大きな金額のシングルアセット入金はお勧めできない。
Orchestra Financeでは、プライスインパクトの警告が表示されます。黄色〜赤色が出た場合は受け取れる金額が小さくなるので、本当にそれでいいか?を詳細欄で確認してください。
🎻 We improved price impact warnings
— Orchestra Finance 🎻 (@OrchestraFi) March 16, 2024
Price impact refers to how an individual swap affects the price of an asset pair. The bigger the trade - the bigger the price impact. Swapping with a high price impact can result in receiving fewer tokens.
TLDR;
If you see red, be cautious… pic.twitter.com/Hy0J0asPTM
❤️ 他チェーンAMMとXRPL AMMの違い
他チェーンでは、一般的に流動性はプロジェクト固有です。
他チェーンで流動性提供者として困ること
あなたがイーサリアム最大AMMであるUniswapのETH-USDTペアに流動性を提供しているとしましょう。
これはUniswap固有の流動性であるため、別AMMプロジェクトSushiswap上でETH-USDTペアがよくトレードされていたとしても、そこからあなたに手数料は入ってきません。
効率よく利益をあげるには、どのAMMプロジェクトの流動性プールがよく使われるか把握し、適切なタイミングでそのプールに流動性を提供していなければなりません。
他チェーンでトレーダーとして困ること
あなたがSushiswapでETH-USDTペアのトレードを行ったとします。
その後、実はUniswapのほうがレートが良かった・・・という発見(後悔)をする可能性があります。
うんちく
これらが理由で、他チェーンでは各AMMプロジェクトによる流動性争奪戦が行われます。あの手この手でインセンティブキャンペーンを繰り広げ、流動性を集めるのです。 またトレーダーに向けて、複数AMMプロジェクトの流動性をチェックして最良レートを提供するアグリゲータプロジェクトも人気となりましたが、黎明期は詐欺アグリゲータもいて私は随分苦労しました。
一方、XRPLでは流動性はプロトコル一意です。
ETH-USDTペアの流動性はチェーン上に一種しかありません。超シンプル。
※複数の発行者が同じティッカーシンボルを持つ異なるトークンを発行している場合があるので注意してください。例えば、XRP-USDペアの場合、XRPーUSD(GateHub)、XRPーUSD(BitStamp)の2種類の人気プールが存在します。
XRPL上のAMMプロジェクトは全てUI(ユーザインタフェース)にすぎず、見えている流動性は同じものです。
Orchestraから流動性を提供して、別AMMプロジェクトAで経過を追って、さらに別AMMプロジェクトBから流動性を取り出すということも可能。チェーン自体がアグリゲータなのです。
❓どのAMMプロジェクトに流動性を提供するのが一番ハイリターンか?(*1)
❓トレードのレートが一番良いのはどこか?
❓第三者アグリゲータプロジェクトは信用できるのか?
といった他チェーンでの悩みを忘れ去ることができます。
⭐️ XRPLでは、どのAMMプロジェクトで流動性を提供しても流動性は同じ場所(プロトコル)に置かれる
⭐️ つまり、XRPLでETH-USDTペアに流動性を追加したら、どのAMM UIプロジェクトでトレードが行われようと手数料が入る
⭐️ 流動性の断片化が起こらないことはプライスインパクトの低下に繋がり、トレーダーに快適なトレード・エクスペリエンスを保証!
*1) AMMプロジェクトによっては「うちを使って流動性を提供/トレードした場合は追加報酬をエアドロするよ」というキャンペーンを行っている場合もあります。
つぶやき
この「流動性がプロトコルレベル」はユーザにとってとっても便利なんですね。
LP手数料投票って何?したほうがいいの?
XRPL AMMでは、流動性提供者がそのプールを利用したトレードにどれだけLP手数料を課すか投票で決めることができます。
あまり利用されていないプールの流動性提供者はLP手数料を低くしてトレーダーのトレード意欲を誘ったり、逆に、人気プールではLP手数料を高めに設定したり。実際のLP手数料は、投票者のうち上位8名の流動性提供者によって決定されます。そのため、大口向けの機能ではありますが、投票後に流動性を抜いた投票者がいた場合は次に新しい票が入った時点で上書きされるため、小口ユーザにまったく利用チャンスがないわけではありません。LP手数料設定に満足していない場合は迷いなく参加しましょう!
つぶやき
一般的なLP手数料は0.1%~0.3%で、ステーブルコインの場合はさらに低い場合があります。
トークンを持つプロジェクトの多くは自分たちである程度初期流動性を提供し、ユーザがトレード時に流動性で困らないようにするため、初期LP手数料をコントロールできます。このLP手数料設定およびTranser fee設定はプロジェクトの方針を判断するひとつのチェックポイントです。
オークションって何?
Continuous Auctionと呼ばれているXRPL AMMのオークション機能は、大口トレーダー向けの機能です。 LPトークンを用いて特定プールに入札し、見事オークションスロットを落札した場合、最大24時間LP手数料が90%オフになります。
例:
とあるユーザは大口トレーダーで、次の24時間でXRPとHOTCHトークンを頻繁にトレードしたいと考えています。取引高はおおよそ500万円です。
XRP-HOTCHプールのLP手数料は1%なので、彼はトレードのたびに原資の1%を失い、ざっくり合計5万円がLP手数料として徴収される見込みです。
そこでオークションの出番です。
XRP-HOTCHプールを見ると、5000円分のLPトークンを入札すればオークションに勝てそうです。
ユーザはXRP-HOTCHプールに流動性を提供して5000円相当のLPトークンを得、狙い通りオークションスロットを落札しました。この時点でXRP-HOTCHトレードのLP手数料は9割引の0.1%になるとともに、入札に用いたLPトークンはバーン(焼却)されます。
したがって、ユーザが最終的に支払うLP手数料は取引高500万円の0.1%、合計5000円です。オークションに費やしたLPトークンコストとあわせても1万円ですから、当初の試算LP手数料5万円と比べると随分節約できました。
- ひとつの落札の有効期間は24時間です。
- ユーザがオークションスロットを保持している間に、別のオークション参加者がより高い入札を行った場合、ユーザはオークションスロットを失いますが、残りの時間に応じ入札に用いたLPトークンが返却されます。
- 入札はウォレット単位ですが、LP手数料90%オフの恩恵は上限4つまでの追加ウォレットと共有できます。つまりユーザAがオークションを落札し、友人B、C、D、EにLP手数料90%オフをプレゼントすることが可能です。※入札時点で追加ウォレットアドレスを入力する必要あり。
オークションは大口トレーダー以外には無関係?
LP手数料90%オフは無関係かもしれませんが、「オークション落札者のLPトークンはバーンされる」点は他の流動性提供者に大いに関係があります。具体的な数字を使った例を見てみましょう。
ある流動性提供者はXRP-HOTCHプールのシェアを0.5%(オークション前は25000円相当)持っています。彼女は大口トレーダーではないので、オークションには参加しません。
先ほどのオークション参加者は、XRP-HOTCHプールのシェア0.1%(5000円相当)をバーンしました。彼がバーンするのは5000円相当のXRP-HOTCHプールのシェアであって、実際にXRPやHOTCHトークンをバーンするわけではありません。つまり、彼がシェアを放棄した分だけ、他の流動性提供者のシェアが増えます。
オークション後の彼女のシェアは約0.5005%で、25025円相当です。つまり彼女は何もしていないにも関わらず、オークション落札者のLPトークン焼却により25円資産が増えました。
このオークションの仕組みは、流動性提供者が被るリスクであるインパーマネントロス(IL)を軽減するものとして期待されています。
つぶやき
XRPLにはまだまだトレーダーに魅力的なアセットが足りないので、このオークション機能が頻繁に利用されるのはまだ先だと予想。
またプール規模に応じ必要な入札額も増えるので、どこまで利用されるのかは不明です。個人的には非常におもしろい機能だと思うので、未来に期待。
AMMに流動性提供者として参加するのは、早いほうがいい?先行者利益がある?
でもそこまで大きな先行者利益になるとは思えないので、慎重に進めて欲しいです。今回説明した通り、お金を突っ込んでおけばあとは放置でパッシブインカムというものではないので、理解するまで情報を集めて、実際に初めて入る場合は少額で試してみてください。
朝5時に会いましょう!!
あとがき
なかなか手強いAMM、少しでも理解の助けになる情報をお届けできましたでしょうか。
XRPL日本コミュに興味のある方は、ぜひXRPL日本ディスコードサーバまで!
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