本記事は、2023年1月10日にRippleが公開した2023年のクリプト予測&同社が重視していく分野のアナウンスメント記事の和訳です。
まえがき
新年の訪れは、しばしばリセットや心機一転・再出発の機会として捉えられることがあります。
クリプト業界では、ジェットコースターのような1年から落ち着きを取り戻すため、このような楽観的な感覚が歓迎されます。特に2022年のネガティブなニュースは、BUIDLを続けクリプトをメインストリームへ移行させようと着実に活動を続ける業界のプレイヤーたちを不安にさせたため、これは当然と言えば当然です。
さて、2023年はクリプトとブロックチェーンにとってどのような年になるのでしょうか?
一言で表すのなら「ユーティリティ」です。
これは、2023年の予測に参加したほぼすべてのRipple幹部の標語でした。
Non-Fungible Token(NFTs)から中央銀行デジタル通貨(CBDC)、サステナビリティ(持続可能性)まで、今年クリプトに期待されることのほとんどは、実世界での実用性に関わるものです。
CBDCsとNFTsがよりリアルに
2022年の業界における混乱の反動もあり、Devraj Varadhanは(Ripple のエンジニアリング部門責任者)、「マーケットにおいて、高度に投機的な企業がクリプトを利用したソリューションを活用して実世界の問題を解決し、現時点で満たされていない顧客ニーズに対応する企業へと全般的にシフトすること」を期待しています。
彼は、このような企業こそが長期的な成功を収めると信じています。
実世界へのアダプションにフォーカスすることも、CBDCの来るべき時代を推進する手助けとなるでしょう。
Sendi Young(Ripple 欧州担当マネージング・ディレクター)は、CBDCが中央銀行の役割を強化し金融包摂を促進する可能性があるため、2023年には欧州以外の国でも CBDCのパイロットプログラムを発表するところが増えると考えています。
James Wallis(中央銀行責任者)も、国境を越えた決済を強化する相互運用可能なCBDCソリューションを強調しつつ、今後1年間、世界中でCBDCパイロットプログラムがさらに増えると予想しています。
このようなユーティリティへのシフトはNFTにも及んでいます。
NFT第一波はデジタルアートやコレクターズアイテムが中心でしたが、不動産やカーボンマーケットといった現実世界のユースケースを模索する第二波がすでに始まっています。
David Schwartz(Ripple の技術部門最高責任者)は、所有権の効率性と透明性を解決するこれらのタイプのアプリケーションこそが、どのようなユースケースが定着し、NFT が今後も存在し続けるかどうかを決定付けると述べました。
金融機関が本格的にブロックチェーンに参入
また、機関投資家によるクリプトとブロックチェーンの継続的な採用の根底には、より大きなユーティリティがあります。
Brooks Entwistle(Ripple APAC担当マネージングディレクター)は、流動性に関する懸念はハイプサイクルに依存したクリプト企業を淘汰し続けると考えており、この進化を急成長と必然の暴落、業界の成熟という同様の事例を見せた「ドットコム・バブル」と比較しました。
市場の低迷にもかかわらず、Sendi Young(Ripple 欧州担当マネージング・ディレクター)は、効率性、透明性、スピードが向上する可能性があるため金融機関がクリプトソリューションの長期的な採用を加速させと考えています。
銀行やその他の大規模な金融機関は、数日や数週間ではなく数年単位で利益が実現すると想定して新技術に投資するため、デジタル資産とブロックチェーンのアダプションは2023年以降も継続すると見ています。
(Sendi Young,Ripple欧州担当マネージングディレクター)
バークレイズ、ゴールドマン・サックス、JP モルガン、マスターカード、モルガン・スタンレー、SBI、VISAなどの企業が、クリプトの保管やトレーディング、決済や取引執行まで、ブロックチェーン関連のプロジェクトを推進していることは既に立証されています。 銀行にとって問題はクリプト戦略を持つべきかどうかではなく、その戦略とは何か、どのように実行する計画なのか、ということなのです。
クリプトを通じたより大きなインパクトとサステナビリティ
Ken Weber(Ripple インパクト担当責任者)は、大規模な NGO(非政府組織)が、難民や避難民などの経済的弱者により良いサービスを提供するためクリプトをプログラムに組み込み始めるだろうと予測しています。従来の手法が危険にさらされたり使えない場合でも、クリプトは国境を越えた支払いメカニズムとして機能できるからです。
実世界でのクリプトのユーティリティは、インパクト指向やサステナビリティ指向の取り組みにも及んでいます。
ウクライナでは5000万ドル以上の暗号資産による寄付が救援活動の強化や対ロシア防衛支援に役立てられました。Mercy Corps Feeding Americaのような世界トップクラスの慈善団体の多くが暗号資産による寄付を受け入れているのは、暗号資産は旧来の国際送金に代わる迅速で効果的な送金手法であるためです。特に一刻を争う局面では。
また、クリプトとブロックチェーンは気候変動との戦いにおいてますます重要な貢献者となってきています。2022 年はクリプトのサステナビリティの分岐点となる年でした。業界では、イーサリアムのMerge、ビットコインマイニングによる環境への影響を軽減するCrypto Climate AccordやChange the Codeといった取り組みを通じて、二酸化炭素排出量の削減に努めました。
Carbon Cure、Carbon Title、Newlight などの革新的なカーボン除去企業は、ブロックチェーンを活用してカーボンクレジットの追跡と販売を改善し始めました。Ripple によるカーボン市場拡大のための1億ドル投資や Hedera の1億ドルのサステナブル・インパクト・ファンドなど、既存の企業は多額の資金提供で歩み寄りを示しました。
Weber は、この勢いは2023年にも続き、カーボン市場はブロックチェーンとクリプトの明確なユースケースとして名を挙げ、より環境に優しいグローバル経済へのシフトを加速させるだろうと述べています。
世界を Web3 につなぐ
このユーティリティとゴールを実現するために、Rippleチームは2023年の間にトレーニングと開発の分野で2つのシフトが起きると予想しています。
1. 若年世代のキャリアへの影響
企業の需要や競争の激化する人材プールに対応するため、大学では卒業生に向けクリプトやブロックチェーンソリューションのキャリアをより明確に準備し始めるでしょう。Eric Van Miltenburg(Ripple 戦略イニシアチブ担当責任者)は、2025年までに世界の大学の少なくとも半数が、ブロックチェーン、クリプト、Web3 をビジネスとファイナンスの主要プログラムに取り入れると予測しています。
2. 顧客体験をより重視する傾向へ
業界は顧客体験を優先していきます
特に旧来の通貨であるフィアットとクリプトの世界の架け橋となることに注力するでしょう。Varadhan(エンジニアリング部門責任者)は、これが現在のクリプトユーティリティの大きなハードルであり、クリプトのOn-RampとOff-Rampをマスターできた企業は、今後数年大きな競争力を獲得することになると述べています。
常識的な政策変更
もちろん、政策や規制をもっともっと明確化しないかぎり、このような成長は維持できないでしょう。
EMEA のポリシーディレクターである Andrew Whitworth 氏は、2023年には世界中の規制当局の関与が強まるだろうと予想しています。特に、ドバイ、カタール、サウジアラビア、バーレーンなどの湾岸諸国は新しいクリプトフレームワークを推進し、アフリカの国々は経済と市民に貢献するクリプトソリューションを最大限に活用する方法を強くアピールすることになると考えれています。
APAC では、ポリシーディレクターの Rahul Advani 氏が分散型金融(DeFi)アプリケーションの消費者と企業による採用が拡大しており、シンガポール金融管理局(MAS)や日本の金融庁(FSA)などの規制当局が2022年に開始した取り組みを推進する動機となるだろうと述べています。
身近なところでは、ゼネラルカウンセルの Stu Alderoty が、2023年前半にSECとRippleの裁判で、Ripple に有利な判決が出ることを期待しています。 彼は、これが米国のクリプト業界を前進させ、企業がクリプト作業をオフショア化するのを阻止する動機になると考えています。
我々は、クリプト産業全体とアメリカのイノベーションを代表してこのケースを戦っています。米国におけるクリプトの技術イノベーション繁栄に切実に必要な規制を明確化するのです。
(Stu Alderoty, ゼネラルカウンセル )
Susan Friedman(Ripple のポリシーディレクター)は、2023年が米国における常識的な政策アプローチによって定義されることを望んでいます。消費者を保護し、スポット市場の管理を明確にし、トークンを適切に分類する新しい法措置を、議会全体で賛否両派のリーダーが取り組むことを強く願っています。
クリプト市場の成熟
2022 年は、FTX、Celsius、Voyager、Three Arrows Capitalなどの企業が倒産し、業界全体の統合が進んだと思われます。評価額の低下や不良債権は、多大な時間とリソースを必要とする能力や専門性を獲得する機会を提供します。
Young(欧州担当マネージング・ディレクター)は、より多くのクリプトおよびブロックチェーン企業が、従来の金融サービス企業や他セクターの既存企業によって買収されるとみています。このような統合の増加は市場の成熟の兆候であり、全体的により健全なエコシステムにつながると彼女は言います。
Varadhan(エンジニアリング部門責任者)は、クリプトソリューションにおける次のAppleやAmazonの台頭を予見する、おそらく最も大胆な予測を発表しました。彼は昨年の暗号と経済的な課題によって、企業はビジョンと顧客ニーズに再集中せざるを得なくなり、その結果、業界は比類のない顧客体験を重視するようになると考えています。
どのようなビジョンを達成するためにも、企業は「顧客重視の文化」「長期的な焦点」「失敗を受け入れる勇気」「顧客の喜びを見たときにそれを倍にして返す気持ち」を持つ必要があります。
(Varadhan, Rippleエンジニアリング部門責任者)
最後になりますが、クリプトの冬がクリプトの春をもたらすこと、すなわち2022年が試練の年であったことで業界がより強化され、実世界のユーティリティに焦点を当てることができると、Rippleチーム全員が前向きです。